| 梅の実 |
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
空が時折、水分をたっぷりと含んだような淡い灰色に染まる日が
増えてきたような気がします。
本日は台風により被害を受けたり避難されている方も
いらっしゃるかもしれません。
どうぞ安全第一でお過ごしくださいね。
さて、季節はまもなく、6月6日に二十四節気の第九番目である
「芒種(ぼうしゅ)」を迎えます。
聞き慣れない上に漢字も少し難いので、最初は「何のことだろう?」
と思ってしまう暦かもしれません。
でもその意味を知ると、私たちの主食である「お米」やこれからの
雨の季節と深く結びついたとても大切な節目であることがわかります。
本日は、本格的な雨の季節を前に自然の力強いリズムと
手仕事の楽しさを教えてくれる芒種の世界をご紹介いたします。
前回の小満についてはこちらからも読めます
(小満とは?命が満ち始める暦の話| 初夏の恵みを感じる季節)
穂先の「針」が教えてくれる、命のバトン
「芒種」という言葉、分解してみると
「芒(のぎ)」の「種(たね)」と書きます。
この「芒」とは、稲や麦などの穂先にあるツンツンとした
針のような毛(突起)のこと。
普段私たちが目にするお米の一粒一粒の、あの尖った先端のことです。
つまり芒種とは、
「穂先にツンツンとした毛を持つ穀物の、種を蒔く時期」という意味。
現代の私たちは、お店に行けばいつでも真っ白でおいしいお米を
買うことができます。
でも暦を一段めくってみると、そこには1300年以上前からこの季節の
雨を待ちわび、泥にまみれながら田植えをしてきた先人たちの
ひたむきな姿が浮かび上がってくるのです。
どこかノスタルジックでみずみずしいこの季節の魅力を、
一緒に紐解いてみましょう!
田植えの最盛期と「梅雨」の語源
古代の暦の知恵が詰まった芒種。
現代の暦や気候と照らし合わせると、おもしろい発見が
たくさんあります。
二十四節気の第9番目
「小満」で万物が満ち満ちた後、次に来るのがこの「芒種」です。
夏のちょうど前半の締めくくりにあたります。
実際には「種まき」ではなく「田植え」の時期
暦が作られた大昔の中国ではこの時期に種を蒔いていましたが、
日本の気候では種まきは春のうちに済ませています。
そのため、日本の暮らしにおいて「芒種」は育った若い苗を
田んぼへ移す「田植えの本格化」を意味する言葉として定着しました。
昔の農家にとって、一年で最も忙しい時期
「芒種」の時期は、前節期の「小満」で実った麦を収穫し、
息つく暇もなく田植えを始めるタイミングです。
猫の手も借りたいほどの忙しさの中で、人々は互いに助け合いながら
一年の実りの基礎を築いてきました。
梅雨(つゆ)の足音が聞こえる頃
この芒種の期間中である6月11日には、
雑節の「入梅(にゅうばい)」があります。
暦の上での梅雨入りです。
田植えをしたばかりの苗が根を張るためには、
たっぷりの雨が必要不可欠。
梅雨は、農業にとってまさに天からの恵みなのです。
蛍が舞い、梅が実る幻想的な世界
芒種の15日間をさらに細かく分けると、まるでおとぎ話のような
美しい自然の変化が描かれています。
初候:螳螂生(かまきりしょうず)
秋に産み付けられた卵から、カマキリの赤ちゃんが一斉に
生まれてくる頃です。
数ミリほどの小さな体で一丁前にカマを持ちリズミカルに
揺れながら歩く姿は、なんとも愛らしいものです。
虫が苦手な方はごめんなさい!
次候:腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)
「腐った草が蛍になる」という、不思議な名前の候です。
もちろん本当に草が虫に変わるわけではありませんが、
昔の人は湿気を含んで発酵した草むらからぽうっと幻想的な光を
放って飛び立つ蛍を見て、草の命が形を変えて輝いているのだと
信じたのでしょう。
とてもロマンチックな視点ですよね。
末候:梅子黄(うめのみきばむ)
青々としていた梅の実が、ほんのり黄色く色づき甘い香りを
放ち始める頃。
この候を迎えると、いよいよ本格的な雨の季節が幕を開けます。
雨の名前を慈しむ
「雨が続くと、なんだか気分が沈んでしまう」という方も
多いかもしれません。
でもこの時期の雨には、その憂鬱さを吹き飛ばすような美しい名前や
由来があります。
「梅雨」という言葉の語源
なぜ「梅の雨」と書くのでしょうか。
一説には、まさに七十二候の「梅子黄」の通り、
「梅の実が黄色く熟す頃に降る雨だから」と言われています。
また、カビが生えやすい時期であることから「黴雨(ばいう)」と
呼ばれていたものが、同じ音で季節にぴったりの「梅」の字に
変えられたという説もあります。
田んぼを潤す大切な雨
この時期の雨は、田植えを終えたばかりの稲にとって命綱です。
雨音を聴きながら、これから稲がすくすくと育つ姿を想像してみると、
雨の日が少し誇らしく、愛おしく思えてきませんか?
雨の季節を「手仕事」で豊かにする
外に出ることができない雨の日が増えるからこそ、家の中で心を
静かに満たす芒種ならではの過ごし方をご紹介いたします。
「梅仕事」で、季節を瓶に閉じ込める
スーパーの店頭に、ふっくらとした梅の実が並び始めます。
青梅で透き通った梅シロップや梅酒を仕込んだり、黄色く熟した梅で
梅干しを作ったり。
ヘタを竹串でぽろぽろと取る時間は、無心になれる極上のご自愛
タイムです。
数ヶ月後、美味しくなった梅を味わう楽しみも生まれます。
紫陽花(アジサイ)のグラデーションを楽しむ
雨に濡れることで、いっそう鮮やかさを増す紫陽花。
緑から青、紫、ピンクへと毎日少しずつ色を変えていく様子を
観察するお散歩は、梅雨時期だけの特権です。
蛍(ホタル)の光に会いに行く
もし近くにきれいな川や水辺があれば、夜に少しだけ足を
伸ばしてみませんか?
静寂の中で点滅する蛍の光は、見つめているだけで日々の慌ただしさを
忘れさせてくれます。
私の家の近くでも蛍を見ることができる公園があったのですが、
最近は見ることができないそうで、現在はまた蛍を見ることが
できるように公園の整備が進められているというお話もきました。
私たちにできることも改めて考えたいところです…
梅雨に向けた「お家メンテナンス」
ジメジメが本格化する前に、クローゼットに除湿剤を置いたり
お気に入りの靴に防水スプレーをかけたり。
カビ対策や食中毒予防のために、キッチン周りをアルコールで
拭き清めるのもおすすめです。
「雨の日プラン」を用意しておく
「雨が降ったら、あの映画を観よう」
「お気に入りの紅茶を淹れて、積読していた本を開こう」
自分だけの雨の日プランを持っておくと、朝起きて雨が降っていても
ちょっとだけワクワクできるようになります。
旬の食材で、お腹から健やかに
新生姜や、甘酸っぱくて可愛いさくらんぼ、カリカリとした
らっきょうが旬を迎えます。
特に新生姜やお酢を使った料理は、ジメジメとした湿気で
重くなりがちな体を、シャキッと内側から整えてくれますよ。
雨とともに暮らす工夫を楽しみたい
かつて毎日の忙しさに心が折れそうになっていた頃、私は雨の日が
嫌いでした。
予定通りに動けない気がして、焦りばかりが募っていたのです。
でも、暦を学びこの「芒種」の雨がどれほど多くの命を育んでいるかを
知ってから、雨の日は『自然が「ちょっと休んで、お家で手仕事を
しよう」と言ってくれている日』なのだと受け入れられるように
なりました。
ただ数字が過ぎる毎日に、季節という呼吸を置く。
雨の音に耳を傾け熟した梅の香りを嗅ぐだけで、胸の奥の息苦しさが
ふっと軽くなっていきます。
皆さまは、これから始まる雨の季節をどんな工夫で楽しむ予定ですか?
「今年は初めて梅シロップを仕込んでみます」
「可愛いレインブーツを買いました」
「雨の日は部屋で刺繍をします」
そんな皆さまの「芒種の過ごし方」を、ぜひコメント欄で教えて
いただけたら嬉しいです。
恵みの雨に感謝しながら、しっとりと美しい初夏を一緒に味わって
いきましょう!
次回は一年で最も昼の時間が長くなる「夏至(げし)」の頃、
6月18日に
『夏至とは?一年で最も昼が長い日|暦で知る太陽の恵み』
と題してお届け予定です。
ご感想やリクエストなどはコメント・お問合せ欄のほか、
下記のお問合せフォームでも受け付けています。
また、Pinterestではお勧めの過ごし方を抜粋してご紹介しています。
よろしければあわせて見ていただけますと嬉しいです。
それでは本日はここまで。
読んでいただきありがとうございました。
皆さまの毎日が、潤いと優しさで満たされますように。
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